2008年05月11日

僕が一人で羽田空港に泊まった理由・・・ 


 
 静かになった空港。
 わずかにリムジンバスたちが、駐車場に移動するのが見えるだけだ。
 遠くには街の夜景。
 
 どこか外に出歩いて散歩するところもない。
 都内でも、少し珍しいホテルだろう。
 
飛行機 飛行機 飛行機 飛行機 飛行機

 日帰りで福岡に出張して、翌日は札幌。
 最終便で戻って、出直して来るという手もあったが、ここのところの疲れを考えると・・・・・最終便で着いて、アパートの小さな部屋にたどり着くまで1時間とちょっと。モノレールに乗って、人の多い山手線に乗って、ターミナルで乗り換えて、そして数時間眠ったら、また満員の電車で羽田に戻る・・・・考えただけでぞっとする・・・

 最終便で羽田に着いた客たちは、急ぎ足でそれぞれの家路に向かう。モノレールや京急やリムジンバス。喧騒の中を抜けて、どこか知らない国の空港にトランジットで着いた時のような孤独感を感じている。
 
 ホテルのカフェで軽く夕食を済ませる。
 アメリカンクラブハウスサンドとビール。
 ターミナルの喧騒から、ドアを一つ入ると、静かな空間があって、異空間に入り込んだような気分がする。「フライヤーズテーブル」 という名前らしく、飛行機の模型が飾られた店内の窓際に席を取り、滑走路を走る飛行機と、遠くの東京タワーの小さな灯を眺めながら、一人の夕食。
 
 福岡の件は、後輩だと信じて任せたのが失敗だった。あいつがちゃんとやってくれていたら、空港の中のホテルに一人泊まることなどなかっただろうに。最近は、仕事もプライベートも、どうも歯車がかみ合わない。
 
 そんな風に格好をつけている自分自身を、一杯だけのビールで軽く酔った自分が笑う。
 
 「ま、いいか。こんなところ、こんな風にくつろいでいる自分もいるし。」

ジョッキ ジョッキ ジョッキ ジョッキ
 
 部屋に戻り、窓のカーテンを開ける。
 さっきまで各地から戻ってきた飛行機が、駐機場へ移動する灯りが見えていたが、今は静まり帰った暗い滑走路しか見えない。足元には、バス。時折、タクシーやトラックが通るだけで静かなものだ。
 暗い滑走路の向こうには明るい街が見える。
 午前零時。街はまだ喧騒で騒がしいだろうが、ここは別世界だ。
 
 パソコンの電源を入れ、LANケーブルに繋いで、メールのチェックをする。
 福岡空港のラウンジでもチェックをしたのだが、どうにもメールを開ける気がせずに放置したものが数通。公私共に・・・
 
 数通だったはずが、数時間で、もう数通・・・・
 
 福岡の件に関する後輩の謝罪・・・・いや、言い訳メール
 同じく、その顛末の説明を求める部長からの叱責メール・・・だいたい、この人は、うまくいけば自分のおかげ、うまくいかなければ部下のせいだからな・・・
 アシスタントからは新規案件の納期が遅れるという不幸のメール・・・くそ、直接言ってこないで、アシスタント通じて、言ってきやがった、開発部のヤロウ・・・
 先月の交通費清算を早くしろという経理課からの督促メール・・・はいはい・・・
 札幌支店からの会議次第とホテルの連絡メール・・・こちらの会議も荒れそうだな・・・
 
 そして、一番厄介な・・・・・それは携帯に。
 
 Re:.....
 おつかれさまです。福岡から札幌って、日本列島横断ですね。がんばってください。ほんとうを言うと、今日くらいは会ってくれるのかと思っていました。お仕事忙しいのわかりますが、もう少し考えてください。でも、私のお誕生日はないですから、いいですけどね。 LINA 

 
 そう。
 きっと、今日、羽田にいると言えば、無理してでもやってきただろう。
 なのに、なんだかそこまで無理を言うのが・・・・
 いや、そうじゃなくて、来られるのが面倒だったのだ。
 忙しいせいもある。最近、会ったり話をしたりる機会が少なくて、もし、今日、やってきたら、はしゃぐ彼女のペースに気持ちが乱されると、そう思う自分がどこかにいて。
 
 きっとそんなことを言えば、気持ちが離れてしまったのだろうと、大泣きされて、今晩、眠る暇も無くなるだろう。
 そうじゃなくて、どうもこのところ、仕事もうまく流れないし、気持ちがすさんでいて、無邪気にお誕生日を祝おうという彼女と一緒にいたくないと・・・・
 
 ああ、やっぱりダメだな。変に電話すると、喧嘩になりそうだ。
 そんなことはありえないと電話口で泣かれると困る。
 逢いたいのだけども、今は、逢いたくない。
 逢うと、きっとほっとできるのだろうけれど、明日の仕事から逃げ出したくなりそう。
 
 ちぐはぐで、わがままな自分の気持ちをもてあます。
 
 Re:Re:.....
 ごめんね。昨日言ったように、福岡支店のトラブルで予定外の出張だったので、こんなことになりました。明日、一番の飛行機で今度は札幌に飛びます。明後日には、東京に戻ります。お土産楽しみにしていてね。おやすみなさい。
 

 
 窓の外は、静まり返っている。
 ごめんね・・・

月
 
飛行機羽田エクセルホテル東急・・・羽田空港第二ターミナルに直結するホテル。コンパクトにまとまった都市型ホテルだが、窓からの光景は見慣れた空港のはずが、不思議とどこか違って見える。
 ホテル内のカフェ・レストラン「フライヤーズテーブル」は、60年代風のインテリアとディスプレイされている航空機が、かつての国際線空港のレストランの雰囲気を醸し出している。
 写真は、ホテル客室から第一ターミナル方向を見たところ。右側に管制塔ビル。その左下にかすかにJAL機とスカイマーク機の尾翼が小さく見ています。方角的には、遠景は大田区から川崎市方面が見えているはずです。


地図はこちら  

Posted by Romance Car at 02:05Comments(0)TrackBack(0)東京で想う

2008年04月28日

ドーナッツを買う時間 ~ 新宿サザンテラス




「ねえねえ、ドーナッツ買ってよ。」

「買ってよって、なんだよぉ」
 
風も心地よくて、新宿の南口のテラスは、散歩をするのに最適。
新宿って、風を感じて歩くなんて感じの場所がなかったのが、ここができてから変わったなあ。
「なんだよ、あそこって新宿じゃなくて、代々木じゃんかよ」なんて言う奴もいるけどね。
 
「ねぇええ、ドーナッツ!!」

「やだよー、ドーナッツ買うのになんで二時間も待つんだよぉ。俺の辞書には、そういう行為は掲載されておりませんっ」

「食べたいよぅ。並んでいると、試食もさせてくれるらしいよぉ。」
 
どうして、人はこうして並んで買うのが好きなのだろう。
 
東京駅のグランスタでは、かりんとうを求める人が。
谷中銀座じゃ、コロッケを求める人が。
神田には、中華そばを求める人が。
 
不思議だ。なぜに人は、行列を求めるのか・・・・
 
確かに、それなりの味だが、自分は並んで食してみて、感動した記憶がないのだ。
 
「2時間ですよ、ねえ、2時間。新幹線乗ったら、名古屋まで行っちゃうよ。成田からなら、香港まで行っちゃうよ。」
 
「つまんないのー。一緒に並ぶのが楽しいのじゃん。」
 
ほっぺを膨らませて、口を尖らせると、かわいいけど 笑 でも、ヤダ。
 
「分かったよ、今度さ、ソウル出張入ったら、買って来てやるよ。あっちじゃさ、ブームが終わったから、すぐ買えるんだってさ。」
 
この間、ソウルの空港で、若い女性たちが、ピザの箱のようなもの大事そうに持っているのを見かけて、不思議に思って、部長に聞いたら、「若いのに知らないのか」と馬鹿にされて、延々、説明を聞かされた。奥さんと娘さんにねだられているのだが、あんな大きな箱を持って帰るのが嫌で、部長の家では、いまだにソウルでも大人気で数時間待ちということになっているのだということも・・・
 
「またさぁ。そうやって思いつきで言ってない? いっつもそうなんだよねえ。今度、今度、次ね、だもんねえぇ。そうやって、適当にあしらっていればよくってよ。」
 
「よくってよって、あのな、なんだそりゃ?」
 
「で、一緒に並んでくださるんですわよねぇ?」
 
出た! 満面の笑顔。 これが怖いんだなあ。 

出張で行くソウルの空港で、あのでかい箱を持って飛行機に乗る姿を想像すると、今、ここで一緒に並ぶ方が無難か・・・買って帰ることが部長にばれたら、もう一箱、会社にも・・・なんてことを考えると、このかわいい笑顔に免じて・・・・
 
「あのね、ドーナッツを食べる時間はあっという間だけど、買うまでの時間を一緒に過ごすということに、なんていうのかなあ、幸せを感じたりするんですねえ・・・だから、お願いっ!」

はぁ・・・年下だと馬鹿にしていたら、結構、賢くなってる・・
そして、必殺『おねがい』・・・

分かりました・・・落ち込み


料理一昨年くらいから始まったドーナッツ・ブーム。いろいろなショップが、新しいタイプのドーナッツを販売して、首都圏では『ドーナッツ戦争勃発か』なんて言われたけど、マスコミの前宣伝通りには行っていない感じ。全国展開が進まない分、逆に東京の新しいおみやげになっている感じも。
 
ビル新宿サザンテラス・・・・ビルの谷間に空を感じて歩ける空間。眼下には電車が忙しく行きかい、目を遠くに向ければ高層ビルや東京の街が。南口の雰囲気を一変させた。 

地図はこちら

  

Posted by Romance Car at 19:19Comments(0)TrackBack(0)東京で食べる

2008年04月22日

おそうじ(町田市玉川学園のお散歩)



 新しい水色のロマンスカーに乗って、散歩にでかけた。
 お花見をしようという約束だったのが、すっかり桜は終わってしまって。
 でも、いつものお気に入りの散歩コースを歩き、
手製かばんの店や、雑貨店などを冷やかし、
いつもの珈琲店で、ゆっくりと珈琲を飲んで、
帰りに豆を買って・・・・・
ぼんやり考えていると、雑誌から顔を上げて、彼女が口を開いた。

「最近、あれ、書いていないのね。」
「えっ?」
「あれよ。」
「ああ、だってさ、前にいろいろ言われたじゃないか。」
「なにをよ。」
「いや、ほら、知らないうちに、あんなところ、こんなところ行っているんだとか、なんとか・・」
「そりゃ、気になるでしょ。」
「気にしていただいているんですね」
「嫌な言い方ねえ。」
「ははは...」
「まあねえ、創作だと言われてもねえ、もしかしてとか、まだ昔の思い出を引きずっておいでなのかなあとかねえ。」
「そうかなあ...」
「そうよ、ああ、あれはあの方なあとか、これはあの姫かなあとかねえ」
「いやいや、参ったなあ。」
「やっぱり、そうなのねえ・・・・」
「いや、一応、創作だから。」
「一応ってなによ、でも、久々に見てみてさ。それなりに楽しみにしていたし。なんとなく、ちょっとジェラシーを感じながら読むっていうのも、快感なのかしら、なんて.....なにが、おかしいのよ!」
「大人になったのねえ.....」
「なによ、それぇ。」

小田急線「玉川学園前」。
丘の上の住宅地を歩く散歩道は、意外な景色が楽しめる。
第二次世界大戦前から、開けた住宅地だったから、有名な作家や漫画家などが住んできた街。
居心地のよい喫茶店や、レストランや、ショップが数は少ないが並んでいる。
今の季節、都心から少し離れて、緑豊かな住宅地を歩いてみるのも、おもしろい。
歩きつかれて、通りを行きかう人を見ながら、ゆっくり珈琲を楽しめるこの店で、休憩。
春になって、彼女は、どうしてこんなことを言い出したのか。
聞かない方が、安全かな、、、、、、

ハートドキドキ大ハートドキドキ大ハートドキドキ大


 というわけで、神田の交通博物館閉館のショックからも立ち直りウインク
久々に復活させることになりました、って、丸二年が・・・・

 しかし、よくわからないトラックバックやコメントの山・・・・まずは、それらの大掃除で・・・げええ・・・・
日ごろから整理整頓しておかないといけませんね。 
 頻繁に更新できませんが、またよろしくお願いいたします。


初心者お散歩ガイド

 小田急線「玉川学園前」下車です。

 桜のシーズンは、ピンクのトンネルの中をロマンスカーが通過するマニアには人気の撮影スポット。戦前からの高級住宅街として知られ、遠藤周作、田川水泡、みつはしちかこなど、有名作家や漫画家などが居を構えてきました。現在も、有名人のお宅があり、また駅の名前にもなっている(というか、そのために作られたのですが)玉川学園には、多くの有名人の子弟が通うことで知られています。
 こじんまりした駅前ですが、喫茶店や個性的なショップ、レストランなどがあり、ゆったり散歩するには最適。丘に上がると、町田から相模原方面が見渡せるスポットも。
 
 自動車 玉川学園前周辺は、戦前に開発されたこともあり、道路が狭く、また急な坂道が多いので、運転には注意が必要。また、駐車場も少ないので、できれば電車で訪問されることをお勧めします。
 
 料理 今回の舞台は、「玉川珈琲倶楽部」。玉川ブレンドとか、町田ブレンドなどは、おみやげにもいいかも。



大きな地図で見る  

Posted by Romance Car at 19:39Comments(0)TrackBack(0)東京郊外

2006年05月13日

さようなら、交通博物館



 まだまだ先だと思っていたら、ついに閉館してしまいました。
 山手線の窓から見ても、万世橋の上まで長い列が出来ていた。
 
 こんなに人気のあるものだったのだな。
 
 秋葉原も、最近は、きれいになりすぎて、だんだんと空気が変わってきたと、友人の一人が言う。

 「今は、中野とか、吉祥寺とかの方が、おもしろいよ。」

 交通博物館が閉館して、ますます、秋葉原が普通の街になりはしないかな。  

Posted by Romance Car at 14:56Comments(0)TrackBack(1)思い出の中の東京

2006年04月30日

J-Wave(81.3FM)で紹介されました

東京恋愛散歩』が、5月1日(月)に、東京のFM局 J-Wave で紹介していただきました。
放送は、Music Plus(11:30-14:00)という番組の中で、11:45-11:50の時間帯に放送予定のブログ紹介のコーナーでした。お聞きいただいた方は、ありがとうございました。


『 J-Waveは、六本木ヒルズ森タワーの33階にあって、日本で一番高いところにあるラジオ局、らしいです・・・』  

Posted by Romance Car at 20:30Comments(1)TrackBack(0)myblog

2006年04月21日

鏡に映る東京タワー ~汐留~




巨大な鏡に映る東京タワーが揺らいでいる。

「初めて見たときは、わくわくしたわ。でも、毎日の忙しい仕事が繰り返されちゃうとね。」
「まあ、そんなものだろう。しかし、すごい景色だな。」
「冬はもっときれいよ。風が強い日なんかは特に。夕焼けの富士山が見えたりすると。」
「そうだな。なんとなく、富士山は特別だよな。見えると、なにか良いことがあるような気がして。」

悪いと思ったのだけど、彼を職場に呼び出してみた。
前から一度、見てみたいと言っていたし。
それに夜話すと、ちゃんと話せない気がして。

「で、どうしたんだよ、珍しいじゃないか、君の方から呼び出すなんて。」
「もう、限界かなって。」
「えっ。」

何を慌てているのだろう。ぜんぜん、気がついていなかったのだろうか。

「あなたとじゃなくて、仕事が。」
「辞めるってこと?」
「ええ。この春で、もう十一年目がスタートよ。結局、ものにならなかった。」
「そんなことはないだろう。こうやって、頑張ってやってきているじゃないか。」
「そうね、ここまで生き残ってきたのは、自分でもほめているわ。でもね、もう限界なのよ。」

きっと解ってもらえないだろうと思っている自分がいて、少し悲しい。
付き合ってから、もう何年になるかな。
最初の頃は、彼の方が随分、大人に見えたのだけど・・

「いいところでしょ」
「ああ。すごいな。僕には、現実感がないよ。いつだったか君を迎えに来て、下から見上げたことしかないからなあ。こんな風に見えるんだなあ。」
「一度、見せてあげたかったのよ。」
「僕だったら、辞めないけどなあ、こんないいところ。」

彼は、コーヒーにステッィクシュガーを二本も入れて、スプーンをくるくる廻している。

「辞めてどうするの?」
「実家に帰ろうかなあって。」
「えっ。」
「うそよ。帰っても、この歳じゃねえ、仕事もないし、東京なんかに一人で暮らしていた女なんて、
なにやってきたんだかって言われちゃうし。」
「なんだ、東京に残るんだ。」

いつから、こんな単純な人になっちゃったんだろう。
付き合い始めた頃は・・・
いや、前からこうだったんだろうか。
私が変わったのかな。たぶん・・

「さあ。とにかく疲れちゃったの。海外にでも行ってこようかなとか。」
「留学?最近、多いよね、女の人でさ。うちの会社のおんなのこも、この間、オーストラリアに
行ったよ。行動力あるんだよねえ、男よりさ。」

おんなのこ・・。
あなたの彼女は、もうそんな風に呼ばれる歳じゃないってことも、判らないのかしら。

「ねえ、携帯で撮っても怒られないかな。」
「いいんじゃない。」

少し前なら、この場所に彼氏を呼ぶなんてことも、ドキドキしてできなかっただろう。
度胸がすわってきたのか、ずうずうしくなっちゃったのか。
そんなことを考えている自分がおかしくなる。

「笑うなよー。お前にとっては、珍しくもなんともないけどさ。」
「ごめんね、ここでお前とか言わないで。いちおう、会社の中だし。」

留学をするか、それとも独立した元の上司のところに移るか、相談してみようと思っていたの
だけど、もういいや。

うちの部署にやってきている新入社員が二人、きょとんとした顔でこちらを見て、軽く会釈をして
通り過ぎていった。マズったかな。戻ったら、聞かれるな。
そんな風に思った時、ちょうど彼の携帯が鳴った。

「ごめん。この後、一件、廻らなきゃいけないんだ。そろそろ行くよ。コーヒーごちそうさま。」
「うん、こっちこそ、ごめんね、こんなところまで呼び出して。」

エレベーターホールまで、一緒に行く。
「あのさ、慌てない方がいいよ。こんな会社、なかなか入れないんだしさ。何があったのか、
聞けなかったけど、とにかく落ち着いてね。留学もさ、結構、大変らしいし。」
彼が笑顔で言う。
「うん、でも。しばらくバタバタするだろうし、あんまり会えないかもしれないけど、ごめんね。」
「ああ、メールしてね。」

エレベーターのドアが閉まる。

「だめだ、こりゃ。」

なんだかちょっと悲しいんだけど、笑いが込み上げてきた。
実は、冷たい人なのかな、私。
振り向いた正面に、鏡に映った東京タワー。

地図はこちら  

Posted by Romance Car at 18:39Comments(0)TrackBack(0)東京で想う

2006年04月17日

亀戸天満宮の藤





「少し早かったね」
「だって、ほら、藤祭り、22日からって書いてあるもの。あなたらしいわ。あわてんぼうだから。」
「なるほど、でも、桜に比べると長いね。5月までだもの。」

 桜は、ほとんど散ってしまったから、そろそろ藤の花も咲き始めているだろうと、亀戸まででかけたのだが、彼女の言うとおり、少し慌て過ぎたらしい。

「結局、今年も大阪に帰らなかったわね。」
「あ? うん。」
「希望出しているんでしょ?」
「いや、まあ。そうだな。」
「なによ、もう諦めたってこと?」

 ここ数年、実家のある大阪に転勤希望を書き続けてきた。でも、結局のところ、彼女の言うとおり、今年も東京だ。

「書いても、希望は希望だってさ、部長にそう言われたんだ。」
「あらまあ、なら、聞かなければいいのにね。」
「で、今年は書かなかった。ま、いいかって。」
「君は得がたい人材だ。東京の本社から手放すわけにはいかない ってそう言われたんじゃないの?」
  
 彼女は、からかうように言って、からから笑った。
 
「なんだかうれしそうだねえ。そんなわけ無いじゃん。俺程度の人間なんか、ごろごろいる。大阪にもね。わざわざ、このご時世に金をかけて、移動させる理由もないっていうところじゃないの。」
「珍しく、謙虚ねえ。あわてんぼうで、ミスばっかりしているからじゃないの、ねえねえ?この間も聞いたわよ。」
「誰から、なにをぉ?」

 同じ会社で勤めていると、悪いうわさはすぐ彼女の耳に入る。
 
「横浜のお客さんと・・」
「あっー。誰に聞いた、誰に?」
「秘密よー、情報源は厳しく管理しないとね。総務課勤務としてはさ!」

 彼女は、つないでいた手を振り解いて、白いふわりとしたスカートをひらひらさせながら、太鼓橋を渡っていく。春めいて、かわいらしい。もう付き合ってから5回目の春だ。
 
「あのさ、毎年、春になると、どきどきするのよ。ここ数年。大阪に行っちゃうんじゃないかって。」
「総務にいたら、分かるんじゃないの。希望出していないとか。」
「馬鹿ね、あれば人事の仕事だし、最近、うるさいのよ、個人情報なんちゃらって。」
「だから、もう出していないって。希望。」
「だって、それは私のためじゃないでしょ。」
「いや、そんなことは。」

 どうして女と言うのは、「君のために」と口に出さなければ、機嫌が悪いんだろうか。言ったら言ったで、「恩着せないでよ」とかなんとか言われるんだけど。
 
 でも、今日は、彼女を怒らせても、言わなければならないことがあった。

「ね、鼈甲細工のお店見ていい?この間、テレビでやっていたのよ。」

 彼女が橋の上から、目ざとく店を見つける。

「あ、いいよ。もちろん。あのさ、おまえさ、西の方は嫌いなわけ。」

 思わず強い口調になってしまった。しまったと思うけど、もう遅い。

「そういうんじゃないわよ。」

 彼女は、ぷいと横を向いた。何を言って欲しいかくらい、分かっているつもりだ。昨日、先輩に相談した時にも、怒られたのだ。そろそろ、はっきり言ってやれと。そう、だから、今日。

「違うんだよ。あのな。大阪の転勤はないんだけどな。俺な。」
「知ってる。」
「えっ?」
「知ってる。聞いた。」
「えっ?」
「女の子同士の情報網は、早いのよ。ベトナムでしょ?去年も嘘ついてた。大阪なんかに転勤の希望なんか出してない。」
「ごめん。でもな。」
「九月から行くんでしょ。もう、いいわよ。」
「だから、一緒に行かないかって!」

 やっと言えた。もっとロマンチックに告白するつもりだったのに。

「もう、毎年、春になるとどきどきするの、もう嫌だったの。」

 にっこり笑ってくれるかと思ったら、彼女は泣きながら、睨みつけるように僕の顔を見ていた。驚いた僕は、困って、つぶやくように言ってしまった。

「あのさ、来週も、もう一度、来ようか?きっと、満開だろうから。」
「馬鹿ね、来週だと、まだ満開じゃないわよ。」

 泣き顔のまま、笑った、いーっと言う表情をした彼女がいた。

本亀戸天神 ・・・ JR総武線「亀戸」駅下車10分。合格の神様として有名。藤の花の見ごろは、4月後半から5月上旬。境内一面に咲き乱れる景色は一見の価値があります。周辺は下町の風情を残し、散歩には最適。
地図はこちら




   

Posted by Romance Car at 18:09Comments(0)TrackBack(0)東京を歩く

2006年04月11日

夜桜 ~ 千鳥ヶ淵

 夜桜って、見に行ったことはありますか?
 いえ、本当の夜桜です。

 「桜の木の下には、死体が埋まっている・・・そういうんだよ。」
 「ほんと、そんな風に思えなくもないわね。」

 日付が変わろうとする時間。バーからホテルへ戻ろうと、タクシーに乗った時、彼は運転手に九段下で向かうように告げた。

 「次、会えるときには、桜は散ってしまっているだろうから。」
 「もう今週で、終わっちゃうわよ。去年も、お花見、お花見といっている間に、全部散っちゃったのよ。」
 「そうだったね。」
 「千鳥が淵は、きれいよね。桜がプラネタリウムみたいで、とってもきれいだったわ。」

 運転手は、無言で九段下に車を寄せた。

 花見のぼんぼりもすっかり光が消え、静かなお堀に戻っている。
 ほろ酔いで九段坂をあがる二人を、何ごとかあったか数人の巡査が自転車で追い越していく。

 「夜桜って、江戸時代とかはもっと暗かっただろうね。今のは、明るすぎる。たまには、暗いのもいいね。」
 「この間、来たときなんか、お巡りさんがスピーカーで立ち止まらないでくださいって、怒鳴っていたわ。きれいは、きれいだったけどね。」
 「ま、それはそれで、雰囲気だけどね・・」

 千鳥が淵では、屋台の親父が店じまいをしていた。ちらほら、歩いている人がいる。
 
 静かな暗い中に、桜の花が、ぼんやりと白く光を放っている。

 「・・・・・」
 彼女が、声にならないため息をつく。
 「なんとも言えないね。桜の花の滝だ。耳を澄ますと、流れる音が聞こえてきそうだ。」

 それは不思議な風景だ。桜の花が、自ら光を放っているかのように、暗い中で揺らいでいる。

 「手前の桜の花と、そして向こうに見える高層ビルと高速道路の車。なんだか、現実離れしているわ。」
 「ライトアップされている桜の花もきれいだけど、これは妖しい美しさがあるね。」
 「東京って、やっぱり不思議な街よね。こうして時間が止まったような空間があるわ。引きずりこまれそうな気がする。」
 「すっかり引きずり込まれているんじゃないのかい?」
 「怖いわね、そう言うあなたも・・・じゃあ、一緒に引きずり込んじゃうわ。」
 「怖いな。」

 桜の滝が、ほのかに光る風景の中で、彼女が僕にキスをする。


地図はこちら
 
YOZAKURA 0100AM AT CHIDORIGAFUCHI  

Posted by Romance Car at 20:47Comments(0)TrackBack(0)東京を歩く

2006年03月14日

東京でドライブ



休日の東京は、ドライブに向いている。

 普段は、首都大駐車道路なんて言われている首都高速も、休日は比較的に空いている。

 もちろん有名な観光地に行こうなんて間違った心を持ってはいけない。少し足を伸ばして、鎌倉とか、湘南にドライブなんて思うと、大渋滞にはまってしまって、どうにもならなくなる。
 
 あくまで都内を走るのだ。
 都内には、24時間営業しているレンタカー屋がいくつもある。どれも駅に近い。ホテルに近いところで借り出す。
 思い切って24時間とか借り切ってしまうのも、面白いかもしれない。アルコールは楽しめないが、電車の時間を気にする必要がなくなる。
 
 多摩ニュータウンや八王子という郊外に走っていくのも気持ちがいい。思わぬところに、おしゃれな街があったりする。
 横田や厚木なんている米軍基地のある街を訪ねてみるのも、関西からだと刺激的かも知れない。
 
 そんなに遠くに走らなくとも、都内をぐるぐる走り回るのも、今まで知っていた東京とは違った姿を見ることになるだろう。
 
 「そうかぁ。こんな風に繋がってるんや。仕事でよく来るんやけど、地下鉄やと、点と線でどう繋がっているんか、今までよく分からへんかってん。」
 
 お昼前に車を借り出して、日本橋から、神田、御茶ノ水をドライブしていて、助手席の彼女が感心したように言う。
 
 「人間の歩く範囲って、結構、狭いやん。地図の上では知っていても、車で走ってみると、またちゃうね。」
 
 都内をドライブするのに、大きな車はいらない。間違えたらくるりと廻れるコンパクトカーを借りた方がいい。
 
 「なんかええね。地下鉄とか電車に乗って、うろうろしてると、なんやいかにも観光客ぅいう感じやけど、こうして車やと、東京人いう感じするし。」
 「大阪弁丸出しで、わナンバーに乗っていたら、誰もそうは思わへんよ。」
 「いじわるやなあ。気分やんきぶん。」
 
 行きたいところには、ちゃんと標準語で話すカーナビが案内してくれる。東京のFM放送を聞きながら、ドライブをするのは気分がいい。
 
 「東京って、おやすみの日は空いてるねえ。」
 「そんなん、大阪かって、中心部は空いているよ。」
 
 休日のオフィス街は、気持ちよい。
 僕らは、靖国通りを抜け、人も車も多い新宿を抜け、中央高速に入って、郊外に向かって走った。
 
 「高校の先生がね、よく言ってはってん。東京の大学に行って、彼女が出来たら、絶対するんは、中央高速をユーミンの中央フリーウェーをかけて走るんやって。」
 彼女は、笑いながら用意してきたCDをカーステに入れる。
 「この曲って、ユーミンが今のダンナと付き合っている時に、八王子の家に送ってもらう時のことやって。」
 彼女は、上機嫌だ。
 
 

 郊外のショッピングセンターとか、おしゃれな喫茶店とかを廻って、都内に戻った頃には、もう日付の変わりそうな時間になっていた。レンタカーは、2時まで借りている。まだ、余裕はある。
 彼女は、さっきから隣で寝息を立てている。「楽しかったぁ。でも、もう眠いよー。なんかせっかくドライブやのに、見落としたら嫌やな、でも眠い、なんかあったら起こしてな」なんて言いながら、ぐっすり眠ってしまった。
 彼女を起こさないように、ゆっくりと運転して都内を走る。車でなければ、こんな遅い時間に、こんなところの夜景を見ることもないだろう。
 
 「はい、今日、最後のサプライズです。どうぞー!」
 
 彼女を起こす。
 
 「うわーうわー・・すごー」
 
 午前0時の東京湾。タワーの灯りは消えてしまっているけれど、ね、なかなかでしょ。

都内は、皇居や官庁、大使館などが多くあり、警察官も大阪市内に比べて、多い。駐車違反なども厳しいので注意を。ただ、取締りが厳しい分、走りやすい。特に、休日の都内は車も少なく、ドライブには最適。電車では、なかなかな廻りきれないところにも車なら簡単。
 ただし、これから桜のシーズンになると、名所の周辺および駐車場などは非常に混みます。事前に情報を集めておきましょう。


写真は、晴海ふ頭から見たレインボーブリッジ。
   

Posted by Romance Car at 21:45Comments(0)TrackBack(1)東京で見る

2006年03月13日

江戸東京たてもの園




「ええんですかー、先輩。」

「いいのよ。せっかく、あなたがこっちまで出張に来たんだし。」

「先輩って、おもしろいですよね。本社で働いてる先輩は、ほんま仕事だけっていう、切れる人いう感じやのに、けっこう、こうやってサボらはるから。」

「そうだっけ?」

「そうですよー、京都支社にいた時も、一緒出かけると、いっつも帰りは喫茶店に寄らはって。」

「そうそう、そうだったわ。」

 京都から出張して、八王子にあるお客に立ち寄った帰り、一緒に同行してくれた先輩は、突然、おもしろいところがあるからと中央線の電車を途中下車して、タクシーに乗って、やってきたのが、江戸東京たてもの園

 住宅を過ぎて、広い公園にタクシーは止まり、入場券を払って中に入ると、そこには色々な建物がモデルハウスのように建っていて、山の手の家や、下町の家といった風に、集められていた。

「先輩、最近、仕事、どないですか?」

「えっ? なに?」

「あんね、最近、仕事どうしょうかなって。少し前まではね、恋愛第一っていう感じで、別になんも疑い持たへんかったんですよ。でもね・・」

「仕事も楽しいなあ、恋愛もええけどなあーでしょ?」

「そうそう、そうなんです。彼氏は、結婚を意識してるみたいやし、彼のこと好きなんやけど、このまま結婚して、会社辞めて。そういうのに憧れてたはずなんけど、なんやろ。最近、そういうのって、周りの価値観いうんかな、そういうのに影響されているだけで、他にやりたいことがあるんかなあって、思い始めて。」

「いいわねえ、そういうの。私なんか、そういうの通り過ぎちゃったかも。」

「えー?先輩、好きな人おらへんのですか。」

「そんなことないよ。いるよ。いるけど、好きだということ、仕事のこと、結婚のこと、なんか最近、それが結びつかないかな。」

 東京の下町の建物を集めたところには、都電の車輌が置かれ、お店や居酒屋が、さっきまで人がいたような感じになっていた。大きなお風呂屋さんまでがあって、それは「千と千尋の神隠し」のモデルになったやつだよって、先輩は楽しそうに話してくれた。

「ほんま言うとね、彼が結婚しよって言ってくれて、うれしかったんです。そういうもんやって、思っていたし。それがね、この間、部長に呼ばれて、東京に行ってみいひんかって。この業界でやっていくのやったら、やっぱり東京で経験せな、残っていかれへんでって。」

「そうね。私もそう思う。嫌いかも知れないけど、やっぱり今、東京のマーケットを知らないとね。」

「私、いま、よく分からへんのです。うちの彼は、ものすごく東京、嫌いなんです。そやから、就職探す時も、大阪本社で、関西から転勤とかあんまり無い会社って、決めたくらいやし。この間、ちょっと、もし私が東京に転勤とかなったらどうしたらええかなって冗談で言ったら、まじめな顔で、辞めたらええって。結婚するんやしって。」

「でも、そうじゃないんでしょ。そういう答えだって、分かっていたけど、改めて言われると、少しがっかりした。」
「よー分かりますねぇ。そう、なんです。なんや、自分の気持ちが分からへん。」

 先輩は、笑いながら、片手で居酒屋の暖簾をさっと払って、カウンターに座り、置いてあった小道具のビールとコップを持って、飲んでいるフリをして、「ねえ、撮って。」と自分の携帯を差し出した。

「うーん。日の高いうちに飲むビールは最高だねっ!」

「私も撮って下さい!!」

 二人で、居酒屋で飲んでるフリをして写真を撮って、笑い転げた。


「ねえ、いいんじゃない。自分の気持ちで、一番、強いのにしたがったら。」

「えっ?」

「仕事か、恋愛か、なんて考えないで、両方手に入れるくらいの強気で行けば? 東京にもいい男は、一杯いるよ。」

「そう言うやろと思った。」

「さ、そうとなったら、ホンマもんのビールでも飲みにいきまひょか。」

「もーぉ 先輩、戻らなくてもええですか?」

「ええのええの、さっき、部長に、あなたがビール飲んでる画像添付して、京都から来た後輩が仕事にミスして、落ち込んで飲んじゃったので、このまま帰りますってメールしたし。」

「えーっ、嘘ぉ。ひどーー。」

「大丈夫、今日は、出かけに本部長に呼ばれてね、あなたの東京転勤、勧めるように言われてきたのよ。3年前は、使い物にならないんじゃないかって言われていた泣き虫さんが、本社からお呼びがかかったんだから。」

「そんなぁ。でも、そんな風に言われていたんですかぁ。それもショックやなあ。確かによう泣いた記憶あるけど。やっぱり頑張ってきた甲斐、あったかなあ。」

「違うよ。すばらしい先輩がいたからでしょ!」

「えーっ、でも、仕事できても、縁遠いところまで先輩に似ちゃったら、どうしょー。」

「うるさいっ!!」


江戸東京たてもの園・・JR中央線「武蔵小金井」駅北口もしくは、西武新宿線「花小金井」より、それぞれバス5分。
 東京都内各所から、移築してきた建物を見ることができる。今までのこうした建物関係のものは、昔の農家などが多かったが、ここでは明治、大正、昭和の住宅を見ることができる。全て実物であり、屋内も当時の生活が分かるように展示がなされている。
 中には、226事件の舞台とものなった高橋是清邸など歴史的にも重要な物件や、有名な建築家の自宅、風呂や酒屋、居酒屋、文房具屋などが移築、復元されている。最近では、テレビやロケなども多くなっている。
 このたてもの園は、江戸東京博物館(両国)と対で見ると、一層、分かりやすい。江戸東京博物館には、資料関係などが収められ、一方、たてもの園には実物が移築されている。
 関西では、あまり知られていないし、都内から電車で30分程度かかるが、関西で類似する施設はなく、お勧めの施設。
 周辺は、広大な公園で、春は桜が満開となり、かなりの人出となります。
 
 ちなみに、園内には居酒屋『鍵屋』が復元されていますが、残念ながらそこで飲むことはできません。
 
  

Posted by Romance Car at 21:53Comments(0)TrackBack(2)東京郊外

2006年01月06日

萌えの街〜アキバ


大阪から遊びに来た彼女のリクエストは、秋葉原。

「なあ、ええん? ディズニーランドとか、連れてったろうって思ってたのに。」

「アキバに行きたいねん。アキバ・デビューやで。楽しみぃ。」

「なに考えてんねんな。」

「おかしいぃ?この間、テレビでやっててんけど、めちゃおもしろそうやしさ。ディズニーランドは、前にも行ったやん。」

「それ、俺ととちゃうやろ。」

「あはは、そやったっけ。ええやん、誰と行っても。あ、アカネと行ったんや、アカネと、ほら、会社の友達の。」

「あーあ、もう連れて行きません。行きたくありません。」

「怒らんでもええやん。ほら、シーの方は、まだやし。な、な。」

今まで付き合ったことがあるのは、同い年か、少し年上の女の子ばかり、5つも下で、それも付き合い始めて、いきなり転勤で、遠距離交際。大丈夫やろか。

「あんな、秋葉原って言うたら、電気屋が並んでるんやで、そんなとこ二人で行ってどうすんの。」

「えー、ホンマは知ってるくせに。今は、萌えの街。めちゃくちゃ楽しみぃ〜。」

「何が楽しみぃ〜やねん。」

秋葉原の駅を、出るといきなり沢山の人がいて、メイドの格好をした女の子達がビラを配っている。そして、その女の子たちと一緒に写真を撮ろうとする人たちも。あちゃー、ええんかな、こんなところに彼女を連れてきて。

「きゃー。ほんま、ほんま、テレビの通り。わくわくしてきた。な、なっ!」

「ひっぱるなって。」

 会社の関西出身の先輩に来たら、「お前、まだ行ったことないんか、ああ、大阪の日本橋の電気街は知ってるやろ、あれのでかいやつやがな。そんなとこに、デートかいな」と言っていた。そやけど、雰囲気も人の数も、ぜんぜんちゃうし。上司で、40歳独身、自称オタクに、秋葉原の歩き方を聞いたら、「はいはい、これ、地図ね。ここはね、上から下まで、いわゆるフィギュア系ね。地下一階は、18歳未満立ち入り禁止だから、彼女と行くのはねえ。あ、まさか彼女、18歳未満てことないよね。それから、夜も更けてくればさ、ここのビル、ここはね、ビル全体がアダルトグッズの店だよ。えっと、メイド喫茶は、ここが有名だけど、僕のお勧めは・・・」と止まらなくなった。

「きゃー、かわいいぃ。私も、あんなん着たら、似合うやろか。もう、あかんかな、もう歳? なぁなぁ、聞いてんねんけど。」

 もう彼女は、大騒ぎ。確かに、秋葉原は、ちょっとしたテーマパークよりも楽しいかもしれない。

「ひゃー、こっちは40万円、あっちは50万円やって。こんなん、欲しい? どーしょう、こっそりアパートの部屋に入ったら、こんなん置いてあったら。」

「無駄使いや言うて、怒るんか。それとも焼き餅焼いたりしてぇ」

「なんで、人形に焼餅やくんよ。失敬やな、君は。人形は、人形やんか、私みたいに、かわいくおしゃべりしたりせえへんよ。」

「あぁー、なるほど、それでオタクのお兄ちゃんたちは、こっちのフィギュアのお姉ちゃんの方がええんや。見てみ、小顔で、胸が大きくて、足は細くて、余計なおしゃべりせえへんし。」

「ほな、買うたろうか。」

「ごめんごめん。」

彼女は、ミニチュアの家具の食玩を買い、僕は、鉄道車両の食玩を買った。

「なんや、私らも、ちょっとしたオタクになった気分やねぇ。」

「ホンマ、二人してオタク。」

すっかり彼女のペースにはまってしまったけど、いや、実は、今度、
彼女のいない時に、ゆっくり来ようかと。だって、彼女が隣にいたらね、ほら、ゆっくり見られないものもあるから・・・・

秋葉原電気街・・「秋葉原なんて、日本橋で充分やん」なんて、言わないで、行ってみてくださいな。今や、「AKIBA」で通じる国際的な観光地。今、「萌え」は、海外でも通用するようになりつつあるらしく、「KAWAII」を代表するアニメキャラたちが集合するのが秋葉原。カップルで歩いても、かなり楽しいです。
行き方は、簡単。JR山手線あるいは総武線の「秋葉原」駅で下車。時間がたっぷりあれば、上野のアメ横から歩いてくるあるいは、歩いて行くのもいいかも。
  

Posted by Romance Car at 00:04Comments(0)TrackBack(1)東京で見る

2005年12月31日

ホテルで新年を


 「いつだったっけ、大晦日に一緒に明治神宮に行ったの。」

 「もう随分前よ。でも、一度、新年をホテルで迎えてみたかったのよ。」

 「どんな気分?」

 「かなり新鮮。ねえ、紅白とか、テレビをつけないでね。」

 「なんでだよ。ま、別に特に見たいということもないけどね。」

 「いいじゃない。こんなこと、なかなかないのだし、ゆっくり
して。携帯の電源も切ってね。どう、ワインを持ってきたのよ、飲まない?」

 いつになく彼女が饒舌だ。「携帯の電源を切ってね」と言いながら、いたずらっぽく睨みつける。いつの間に持ち込んだのか、赤ワインのボトルと、チーズの包みを手に微笑んでいる。

 新宿の高層ビル街から見える街は、普段と変わらないようにも、
少し違ったようにも見える。

 時折、廊下を楽しそうな声が通り過ぎるのが聞こえる。カウントダウンのパティーに行くのだろうか、それとも初詣に出かける気の早い客だろうか。

 「どうする、初詣、明治神宮にでも出かけるかい?」

 「そうねえ。ねえ、今回は、どこにも行きたくないのよ。駄目?」

 「おやおや、珍しいね。君が、どこにもでかけたくないなんて。」

 「初詣は、明日にして。今日は、二人っきりで、東京の夜景を見ていたい。もし、起きていられたら、こっちの方角だと初日の出が見られるんじゃない?」

 「ああ、起きていられたらね。それに、晴れるかな。雲がかかっていそうだけど。じゃあ、とりあえず目覚ましをかけておこう。えっと、新聞に初日の出の時間があったな。」

 このホテルの部屋を予約するのも、苦労したんだ。確かに、ここから出かけてしまうのはもったいないかも知れない。眺めも申し分ないし、彼女は一緒にいる。ワインも、チーズもある。それに、彼女へのお年玉も、僕のかばんの中に入っている。

 今年は、彼女も僕も忙しくて、一緒にゆっくりとする暇が少なかった。それに、二人とも出かけるのが大好きで、時間ができると、ショッピングだの、映画だの、祭り見物だのと、そういえば、こうしてゆっくりふたりで寛ぐ時間がなかった。

 年末もそうで、数日前も僕は、時間がぽっかり空いて、梅田で3時間ほど、男一人のショッピングをしたのだ。買い換えようと思っていたシェーバーを電気店で買い、後はなにをすると言うでもなく、書店やデパートをぐるぐる歩きまわっただけだった。歳末の楽しげな雰囲気に飲まれたのか、なんとなく華やいだ気分になって、目に留まったセレクトショップで、彼女へのお年玉プレゼントを買ったのだ。キーホルダーと、携帯用のストラップをお揃いで。女性モノを買うのは、苦手だ。すぐに店員が寄ってきて、「贈り物ですか?」なんて聞いてくる。だから、僕的には、結構、思い切ったのだ。と、言っても、実は今年は忙しくて、クリスマスプレゼントを贈れなかった、その代わりなのだけど。

 いよいよ、新しい年。0時。窓の外が賑やかになる。彼女とキスをする。新しい年も、一緒にいられますよう・・・

*写真は、新宿の京王プラザホテルのロビーです。
   

Posted by Romance Car at 22:48Comments(0)TrackBack(0)東京で憩う

2005年12月29日

千駄木で


 師走の夕暮れ。根津、千駄木の辺りの交差点には、正月飾りを売る店が出ている。江戸の頃は、町の火消しである鳶の頭が町内に正月飾りを売る店を歳末に出していたのだそうだ。

 仕事が終わり、彼女と待ち合わせるまでの少しの時間、ふと思い立って千駄木の駅で降り、菊見煎餅で正月用の煎餅を買う。「お使いものじゃないですよね」という店員に頷き、包みでくるまれた煎餅を紙袋に持ち、乱歩に珈琲を飲みに寄る。なぜだか、この慌しいシーズンに初老の男達が、まだ明るい時間からビールを飲み、珈琲を飲み、くつろいでいる。

 待ち合わせは御茶ノ水だから、そろそろと腰を上げ、思いついて、いせ辰で、従兄弟たちへのお年玉を入れるポチ袋を買う。

 日が暮れて冷え込んだこの街をコートを翻して歩くのは、気分がいい。急に暗くなった街の中に、柔らかい明かりの中に履物が美しく並ぶ店がある。

 「あいつは、また着物を着るのかな」

 彼女は、新年の初詣の時に、いつも着物を着てくる。もうそうして初詣に出かけることが習慣になって、何年になるだろうか。

 「でも、いつも3日なのよね。」

 そう少しふくれた顔をする彼女の顔が浮かぶ。
 年末まで、バタバタと働き、大晦日に大阪に行く新幹線に飛び乗り、そして新年の2日には東京へ戻る。

 「やっぱり初詣は和服だよな」などと僕が言うものだから、いつも無理して3日に彼女は、着物で出かけてくるのだ。

 店先に美しくならんだ草履を眺めながら、彼女にプレゼントしても良いかもしれないと思っていた。新しい草履を買ってあげて、そして大阪の実家に連れて行き、元旦に京都へ初詣にでかけるのも悪くないな。急がないと、約束の時間に遅れる。気持ちだけ、草履を心に持って、待ち合わせの場所へ急ごう。

平井履物店  

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2005年12月27日

東京の年の瀬(羽子板市)


 「もういくつになる?」
 「えっと、そうねえ、もう三年とちょっとかな。」
 「そうじゃなくて、ちーちゃんだよ。」
 「あら、彼女はもう9つよ。」

 東京の年の瀬で、僕が一番好きなのは、浅草寺の境内に
出る羽子板市だ。と言っても、もう何年もご無沙汰だった。
 忙しいお互いが、珍しくこの年末にスケジュールがあって、
二人で忘年会でもしようと出かけることになった。
 最初は、新宿か、どこかで食事でもと思ったのだが、
地下鉄のポスターを見て、待ち合わせを浅草にしたのだ。

 「今日は大丈夫だったの?」
 「母が見てくれているわ。母と私と娘と、女三人で気楽な
ものよ。」

 彼女が離婚したのは、もう3年も前だ。

 「ちーちゃんだって。会ったこともないのに。」
 「そりゃそうだけどさ、前から色々聞いているからさ。」
 「もう男はこりごり。と言いたいところだけど。」
 「だけど、なに? 誰かいい人ができた?」
 「まさか。だったら、こんなところ、あなたと一緒に歩いて
なんかいないわよ。」
 「ひどいいいぐさだな。」
 「そういう意味じゃなくて。」
 「こりごり、だけど、正直なところ、このまま母親だけの
役割で、仕事して、家庭に帰って、老いていくのかなって
思ったりするときもあるわ。」
 「もてるだろう。」
 「そうね、都合がいいものね。娘がいて、そんなに若くないし、
遊び相手としてはね。そういうお誘いは多いわ。この間なんか、
月30万でどうだって。マンションは買って上げられないけどって
さ。」
 
 彼女は、けらけら笑って、こちらを見た。とても9歳の子供の
いる母親には見えない。

 「羽子板市って、きれいね。しっとりしていて、素敵。」
 
 「ほらほら、見るだけはただですよ。ゆっくり見ていってくだ
さい。他じゃ見られないものも沢山ありますからね。見て、気に
入ったら、どうぞ買っていってくださいまし。せっかく、ほら、
羽子板市に来たんだから、お一つおうちにお持ち帰りくださいよ。」

 「いいですか、お客さん。高いたって、そんな何百万円もする
訳じゃありません。縁起物です。安いものから、高いものまであ
ります。お気にいったものがあれば、どうぞ聞いてやってくださ
い。」

 売り子たちがかける声も、どことなく落語家のような風情があって
聞いているだけでも楽しい。

 「ほら、あの上のは1万円ですって。大きいからって、高いと
言うわけじゃないのね。」
 「うん、ほらでも、細工の具合が違うよ。」
 「ホントね、小さくても高いやつは、ものすごく立体的よね。」
 「どうだい、せっかく来たんだ、千円の飾り物のやつでも買わないか。」
 「そうね、どれが良いかしら、お店によって違うわよ。」

 さんざん迷った上に、ある店の前に並べられた来年の干支がデザイ
ンされた羽子板を手に取った。

 「どうもありがとうございます。私ども、毎年、ここで店を
出しております。私どもも、毎年、頑張ってやっております。
お客様も、どうぞお元気で、来年も、いえいえ再来年もいらして
お買い求めください。全部揃うまでに12年かかります。どうか、
12年間よろしくお願いいたします。」

 若いやさおとこの売り手は、跡継ぎ息子だろうか。僕と彼女は
顔を見合わせて、吹き出した。
 「12年!」
 「あははは。そうだな、これが12種類並んだら、確かに壮観
だろうな。」
 「いいわねえ、来年も来たくなったわ。」

 羽子板市を堪能し、仲見世通りを歩く。僕は、わざと彼女の
後ろに回りこみ、彼女の肩に手を置き、まっすぐ歩きながら、
でもかなり勇気を出しながら、言った。

 「ねえ、ちーちゃんのパパになるのは、かなり難しいだろうけ
ど。まず、君の彼氏にしてくれないか。」

 彼女の肩がぴんくと動き、そして彼女は立ち止まった。

 「ちーちゃんのパパになってくれる覚悟があるなら・・・」

 僕は、彼女と羽子板を12種類、集められるだろうか。

 「来年は、ちーちゃんも羽子板市に連れてこれるかな。」
 「あなたしだいね。」

☆浅草寺の羽子板市は、毎年12月17日から19日に開かれます。
   

Posted by Romance Car at 01:54Comments(1)TrackBack(0)東京で想う

2005年12月25日

交通博物館


 いつだったろうか、東京にある交通博物館に行きたいと父にねだって、連れて来てもらったことがあった。大阪の弁天町には、交通科学館があるが、やはり子供向けの雑誌かなにかで見た東京の交通博物館に行ってみたかったのだ。

 交通博物館のある場所は、秋葉原に程近い。神田にあると説明されていることが多いが、実は神田から歩くと結構ある。

 大学に入り、就職しても、中央線に乗るたびに、交通博物館の前にある新幹線と蒸気機関車の先頭部分が、ちらりと目に入り、「またいつか行こう」と思っていた。

 その「またいつか」が、残り少なくなってきた。

 交通博物館は、2006年の5月で閉館する。鉄道博物館として、2007年にさいたま市で新たに開館する。

 しかし、あの場所にあってこそ、交通博物館だったような気がするのは、私だけだろうか。

 冬の夕暮れ時に、ふと立ち止まった私を彼女が不思議そうに見て、言う。
 「入るぅ?入りたいんやろ。」

 彼女のリクエストで、秋葉原を歩いていて、なんとなく万世橋のところまで来たところだ。

 残念だけど、もう閉館時間だ。

 「そうかあ、無くなんねな。前にも、一度、一緒に行こうって言ってたやん。ホンマはな、あんまり興味なかってんけど、そんでも、無くなってしまうって聞いたら、ちょっと行っておきたいかな。お気に入りの場所やってんやろ。」

 あはは、結構、マニアックだよ。

 「最近は、鉄道マニアも女の子増えているみたいやし、もしかしたら、私もはまってしまうかも知れへんよ。私の友達にもいるねん、一人。鉄ちゃんやなくて、鉄子やて、言うてるよ。ま、私は、ならへんやろうけど。」

 少し暖かくなった頃に、また遊びに来るか、東京に。俺のマニアックツアー全開言うのは、どう。ほら、俺のこと、もっと知りたいって言っていたしな。
 
 「えーっ、知らんでもええ部分まで、見せんといてっ!」

 交通博物館
 閉館を前に、さまざまな催しが行われる予定。マニアではなくても、おもしろいかも。特に幻の駅と呼ばれる「万世橋」駅の遺構が公開される。実は、この交通博物館がある場所は、1912年(明治45)に開業した中央線の始発駅であり、ターミナルだったのだ。当時の駅舎は、レンガ造りの堂々たるもので、首都東京の玄関口にふさわしいものとして造られたと思われる。しかし、その駅はわずか13年間使用されただけで、閉鎖。幻の駅と化したのです。秋葉原側から見ると、確かに堂々たるレンガ造りの高架が目に入ります。今回、閉館のイベントとして、この遺構の公開もされるそうです。


   

Posted by Romance Car at 00:39Comments(1)TrackBack(3)思い出の中の東京

2005年12月24日

浅草で「すき焼き」


「この間ね、会社で忘年会があって、しゃぶしゃぶだったの。」
「そりゃ、豪勢だね。」
「そうじゃないのよ。」
 彼女は、ちょっと困ったような表情を作って、笑った。
「それがね、一人一人の前に小さな鍋があるの、当然、肉も一人一人取り分けてあって、一人ずつ黙々と食べるのよ。」
 手振り身振りで説明する彼女の方が、おもしろい。
「へえー。そういや、ランチの時にそんなところに行った覚えがあるなあ。」
「笑っちゃうでしょ、そこまでするなら、別に無理して鍋にしなきゃいいのにね。幹事の子に聞いたら、おじさんたちは鍋じゃないと、忘年会の気分がでないって譲らないし、若い子たちは嫌いな人と同じ鍋に箸を突っ込むなんて、ゼッタイイヤって言うんだって。」
「それで折衷案か。店の方も、ちゃんと分かっているんだ。」

 寒くなると、なぜか浅草に足が向く。コートの襟を立てて、観音様にお祈りして、年末の仲見世を冷やかして、さて、どぜう鍋もいいし、てんぷらも悪くない、昔から通っている釜飯屋も健在だし。新宿や渋谷と違って、年末の慌しい街の雰囲気の中で、ほっこりするのにちょうどよい店が揃っている。

 東京に彼女が転勤して三ヶ月。なかなかお互い忙しくて、三ヶ月目にして初めての東京デートだ。
 
 そういえば、なんの話だったか、すき焼きの話をメールでした時に、「関東風と関西風と違うんだよ」と言ったのだが、今ひとつ、理解していなかったようだし。ということで、浅草のひさご通りの米久本店に。

 「浅草って、あの大きな提灯のぶら下がっているところから観音様に行って、おしまいって感じだったから、こんなところがあるなんて知らなかったわ。」彼女は、ひさご通りを歩きながら、ものめずらしそうにそう言った。米久の店構えも、彼女の関心をひいたようだった。

 下足札をもらい、入り口の大きな太鼓が鳴らされて、僕らは二階に通された。

 「東京って、おもしろいわよね。こういうところが、ちゃんと残っているんだから。」
 彼女は、そういって、にぎやかな店の中を見渡して、微笑んだ。一階には、忘年会の客達、二階には、家族連れや男性客同士、そして、はとバスのツアーの席まで用意されている。
 「なんだかタイムスリップしたみたい。」

 隣の席の男性二人組が、店員に尋ねている。「ねえ、肉の上とトクってのは、なにが違うんだい。ふむ、肉の種類か。では、トクを二人前とビールを。」
 
 「どうする?」と彼女に小声で尋ねると、「お・ま・か・せ」。
せっかくのデートだし、ええい、うちもトクを二人前だ。「お・ま・か・せ」に男は弱い。

 暖かな座敷で、幸せな喧騒に包まれて、二人で鍋を突付く。

 「あれ、春菊、嫌い?」
 「えへへ、ばれちゃった。食べていいわよ。」

 ビールの酔いと、鍋の火照り、そして何気ない彼女の会話を取り戻したことの安心感。

 「ねえ、怒っていない?」
 「なにを。」
 「東京に来ちゃった事。クリスマスも会えないし。」
 「いや。僕も東京、好きだからね。」
 「そうねえ、こんなところに迷えずにエスコートできるってことは
相当、遊んでいらっしゃったってことだしねえ」
 「そうですよ。結構、お金かかっていますからねえ。」
 「あら、もうお金はかけないってことかな。」
 「いやーちょっと困っているんですよー。これから、仕事がなくても東京に来なきゃいけない事情ができちゃったんで。」
 「別に、来なきゃいけない訳じゃないでしょう。」
 「はいはい、失礼しました、来たい理由ができたんでした。」

 二人の箸が、同じ肉をつまみあげる。引っ張るとちょうど、いい具合に二つに分かれる。

 「小さな鍋で、一人一人分かれていたら、イヤだな。」
 「そうね。楽しいわね、この方が。」

 煮詰まった割り下を、白いご飯にかけて、食べる。
 これが、ここでの〆の味。

 店を出ると、まるで昭和三十年代のようなひさご通り。
 彼女が、ふいに腕を巻きつけてきた。
 

*米久本店 台東区浅草2-17-10 03-3841-6416
  予算一人 5000円程度

 米久本店は、創業百年を誇る老舗。高村光太郎の「米久の晩餐 」という詩が有名。これ以外にもさまざまな文人たち、著名人たちが訪れてきた。値段的に「高い」と感じるかも知れないが、チェーン店の居酒屋でも、ちょっと油断するとこれくらいになるから、そう考えれば、この雰囲気と味は値打ちがあるだろう。
 ちなみに、「関東風すきやき」は、「すきやき」とは呼ばず、「牛鍋」と呼ぶ。関西では、鍋の中で砂糖、醤油、塩、みりんなどを混ぜて味を調えるが、関東では、それぞれに店で調合された「割り下」というものを使う。それぞれの店で秘伝があるらしい。ネギの切り方も、その店、その店でこだわりがあるらしい。とにもかくにも、意外な大阪と東京都の違いがはっきりしている料理だから、ぜひ一度、体験を。

   

Posted by Romance Car at 19:36Comments(0)TrackBack(1)東京で食べる

2005年11月07日

東京って・・・


「なんで、みんな、東京、東京って言うんやろ。人いっぱいやし、なんか冷たいし。」

「そやねえ。でも、なんか見つかりそうかなあ、そんな風に思って、来たんかなあ。東京。」

「もう、二年?」

「うん、もう三年目やな。」

「すかっり、キャリア・ウーマンって感じやん。ええなあ。私には、無理やわ。」

「そんなん、かなり気合入れてるからやん。狭いワンルームに住んで、満員の電車に揺られて。こんなとこで、ゆっくりお食事なんて、めっさとあらへんよ。」

「そうなん。なんか、いっつもほら、こういうとことか、丸の内とか、渋谷とかでワインとか飲んでるいうイメージやで。」

「アホかいな。お給料、いくらもろてると思てんのん。」

「そうやなあ。あいつも、そうやねん。疲れた疲れた言うてる。今日かって、私が来てるのに、遅くなるし、明日、早いからって。せっかく休みとって、来たのに・・・」

「そりゃ、悪るうございましたねえ、わたくしがお会いして。どうする、もうちょっと飲む? それなら、もう一本頼んじゃおうか。今日は、おごるからさ。」

「飲む、飲む。そやけど、ほら、さっ、やって。だんだん、大阪弁も抜けていくやんやねえ。」

「彼氏もそう?」

「あいつなんか、ひどいねんで、昨日な、山手線に乗ってたんや。そしたらなぁ、かっこ悪いから大阪弁でしゃべるな、声でかいって。大阪いる時は、そんなこと言わへんのに。」

「うちとこが、別れた理由や、それ。」

「えーそうなん。なんで、そこまでして東京なんよ。あいつも、絶対、大阪帰らへんって、言うてる。」

「そやなあー。ほら、あそこに見えてる東京タワーと六本木ヒルズのせいかなぁ。」

「またぁー馬鹿にするやろ。なにをわけわからんこと言うん。田舎もんやと思って、馬鹿にしてるやろ。」

「なんでぇなぁ。きれいやろー。東京タワー。東京って、夜景きれいやねんなーぁって。なんかほっとするやん。ヒルズも、あんなところで働けたらええなあって、思うやん。ほんまの自分のオフィスは、窓の外には向かいのビルしか見えへんけどね。」

「よーわからへん。大阪の方がええと思うけどなあ。こうして、たまーに遊びに来るのはええけど。」

「そやなぁ、そうかも知れへん。でもなぁ、なんかやってみたいやん。こんだけ大きいやん。自分ももしかしたら、何かできるかもって思うんや。アホやなあ、って元カレにも言われたし、親にも言われた。でもな、そやなあ、おもしろいねん。なんかな。」

「あいつも、同じこと言うてる。お前も東京に住んでみたら、分かるって。そやけど、さびしいことないん?」

「さびしい時は、あるよ。ものすごくさびしくなる時もある。東京がすっごい嫌いやって思う時も、よくあるよ。でもな、うちとこの職場も小さいけど、いろんな人がいるし、東京って、大阪より、やっぱりいろんな人がいっぱいいるなあって。ものすごい刺激になるねん。それ見たら、なんや、自分なんてまだまだやなって。」

「あ、あんた、好きな人できたんやろ。そやからやなあ。白状しいゃ!」

「アホ。そんなんちゃうって。」

「嘘や、赤なっているし。教えてえや。ずるいわ。」

「これはワインのせい。ほら、飲んで飲んで、もう一本空けなあかんねんで、二人で。かんぱーい。」

「あー納得できへん。あいつも、他に好きな人できたんやろか。あー、聞かんかったらよかった。あんたのせいやで、もうーぅ。徹底して飲むで、今夜は。責任とってや。」

写真は、青山の某レストランからの夜景。青山から見ると、東京タワーと六本木ヒルズが、街の明かりの中に、きれいに見えます。  

Posted by Romance Car at 23:36Comments(0)TrackBack(0)東京で想う

2005年11月06日

六本木ヒルズ 〜 変貌する東京


「へぇ、六本木ですか、すっかり変わったんでしょうねぇ。」

行きつけの寿司屋の親父さんが、言う。

「あれあれ、親父さん、江戸っ子なのに、まだ行ったことないのん?」

「江戸っ子の東京知らずってね。存外、地元の人間は、行かないもんですよ。ほれ、あいつはね、近所のご婦人方と行って来たようですがね。」

親父さんは、おかみさんの方をあごでしゃくって言う。

「そんなもんなんや、大阪やと、みんな、東京行った言うたら、ヒルズ行って来たん?って、なあ・・」

「あっ、ああ、そうやな。聞かれる聞かれる。」

ちょっと考え事をしていて、返事がずれる。

「そうなんでしょうねえ、お客さん方でも、地方の方ほど、いわゆるなんですか最先端、みたいなところには詳しいですよね。」

「大阪で、通天閣に上がったことないのんと一緒やねえ」

「なんかちょっと違うような気がするけど」

「いや、あたしなんかね、六本木、なんていうと、あのヒルズってんですか、あれが建ってる辺りのね、ごちゃごちゃした住宅が並んで、金魚屋なんてのもあってね、そういう街の思い出がね」

「そうでしたねえ。あんな土地、どこにあったんだろうって、思ってたんですよ。そうしたら、展示会で建設される前の映像があって、驚いたなあ。街ごとそっくり無くなったんだ。」

「へぇー、そうなんや。」

「でしょう。なんかね、ちょっと寂しいというかね、そういうのがあってね。ま、この歳になると、ああいう最先端には、似合いませんからねえ。」

 僕が知っている六本木からも、大きく変わってしまっている。路地奥にあったという金魚屋は知らないが、今よりももう少し大人の町だったような気がする。

「六本木ヒルズは、いいですけど、ほら、昔の六本木の交差点の方は、なんだか汚くなったわねえ」

おかみさんが、熱燗をつけながら口を挟む。

「そうですねえ、なんだか安売りの店が、屋上に大きなジェットコースターみたいなのを作ったり。なんだか一昔前の六本木ではなくなりましたよねえ。」

「テレビで見ましたよ。嫌ですねえ、あたしら、年取っているせいかもしれないけど、街のど真ん中にああいうのはいけない。」
「ええぇー私なんか、そういうのすぐ喜んで乗りに行ってしまう人やし、あかんなあ。」

街は、どんどん変化する。
六本木ヒルズは、その象徴だろう。
貨物ヤードを利用した品川のビル街と違って、六本木ヒルズは、どこにでもあるような小さな家が建て込み、道路沿いにはビルが並ぶ街が、そっくり消えて、あのビル街になった。

街って、なんだろうとか、人生って、なんだろうとか、少し考える。

ITベンチャー企業とお金持ちの象徴のような六本木ヒルズなんだけど、ちょっとそんなことを考えるにも良い場所かも知れない。

 森都市未来研究所 ・・・ 六本木ヒルズに行き、タワーに上って、景色を眺め、おみやげ買って・・だけではちょっともったいないです。シティビュー内にある森都市未来研究所の展示は、見逃せません。現在、展示されているのは、「都市の模型」。東京だけではなく、上海、ニューヨークの模型が展示されています。模型といっても、特殊な手法で作成された、精巧な模型。東京などは、まるで飛行機に乗って上空から見ているかのよう。写真に撮ると、ホンモノに見まがうほどです。建築や、デザイン、都市に関して勉強している人は必見。ただ、今月(11月)23日までの予定なので、お急ぎを。

(東京シティビュー内/六本木ヒルズ森タワー50F)
■営業時間:午前10時〜午後8時 金・土・祝前日は午後10時まで(いずれも入場は閉館の1時間前まで)
■入場料(東京シティビュー入館料に含まれる):一般/1500円、高校・大学生/1000円、4歳〜中学生/500円
  

Posted by Romance Car at 00:37Comments(0)TrackBack(0)東京で見る

2005年10月30日

明治屋〜京橋


「最近は、いろんなお店で置いているけど、少し前までここまで来ないと無いものが多かったのよね。」

京橋の明治屋。クラッシクな建物が、老舗の風格を持っている。周囲のビルも風格があるものが多い。東京駅からも、銀座からも近い。大手企業の本社が軒を連ねる辺りだ。

「お店の空気とか、香りが違うのよね。学生の頃は、なんだか、ここに来るだけでちょっと背伸びしているような気がしたわ。」

あ、このキャンディー。懐かしいなあ、昔あるよね。亡くなった祖父が好きだったんだ。

「あら、私も好きよ。キャンディーそのものより・・・」

まわりにまぶしてある砂糖が好き・・

「よく覚えているわねえ。」

そう、そういうくだらないことばかり覚えているんだよな。お気に入りのチョコは、ほら、これだ。

「あはは、私よりも詳しいかもねえ。でも、私だって、覚えているわよ。ほら、このタコスの箱詰め。よく、みんなと集まって、食べたじゃない。今じゃあ、あんまり珍しくもないけどね。」

だったよなあ。留学生が作ってくれたりしてさ。あの頃の味が、一番だな。

「そういえば、一度、二人で国際展示会に行って、食べたスープ、あれおいしかったわよね。」

あれはね、ペパリッジファームのやつさ。ほら、君が好きだったミントチョコクッキーのある・・・

「あ、ミントミラノね。へえ、缶のスープもそうなんだ。」

そう、駐在していた時に、あっちのスーパーで見つけてね、とっても懐かしくて時々買って、食べていたんだけど。クラムチャウダーとか、ロブスタービスクとかね。

「懐かしい。ねえ、無いかな。」

残念でしたぁ。ペパリッジファームは、キャンベルに買収されたらしくてさ、スープはなくなっちゃったみたい。

「残念。」

いつだったか、車飛ばして、ここまでカレーの材料を買いに来たよね。

「そうよ、あなたが急に、本格的タイカレーを作るなんて言い出したから。」

そうだっけ? 確かに僕はタイカレーを欲しいって言ったけど、作るならやっぱりフクロダケがいるって頑張ったのは、君じゃなかったっけ。

「えーっ、そうだっけか。」

また作ってみようか。タイカレー、フクロダケの缶詰買って帰って。
・・・「やり直してみないか」本当は、そう言いたかったのだ。

「いいわねえ。フクロダケいっぱい入れてね。たけのこも。外食よりも、そっちの方が楽しいかも。前みたいに・・・」

明治屋京橋ストアー・・・実は、ここが明治屋の本社ビル。つまり本社の一階にあるのが、このお店という訳。創業1885年(明治18年)という日本でも最古の食のセレクトショップ。そのいわば本店。ちなみにこのビルは、 1933年(昭和8年)建築。建築途中で地下鉄建設も始まり、開業と同時に地下鉄の入り口が設けられた。輸入食材に、西洋建築に、地下鉄。長い間、日本でももっともハイカラな場所だったのだ。   

Posted by Romance Car at 02:27Comments(0)TrackBack(0)東京で想う

2005年10月29日

東京温泉


学生時代、東京と大阪の間を何度も往復した。
時には、仲間と一緒に在来線で、のんびり行ったこともある。

 よくお世話になったのは、夜行バスだ。
 東京駅に着く前、サービスエリアで止まると、サラリーマンたちは
身支度を整え、ネクタイを締め、顔を剃り、東京の街に消えていく。
 「社会人になると、あんな風にがんばらねばならぬのか」
そう思ったものだった。

 東京駅に朝、到着するバスに乗ると、車内で東京駅の中にある銭湯の割引券が配られた。
 学生にとっては、その入浴料は結構高く、結局のところ一度も言ったことは無い。到着すると、そのまま大学へ向かい、研究室のソファで始業時間まで、うたた寝するのが習慣だったからだ。

 今も東京駅の八重洲口に、その温泉がある。男性専用なのだが、日本でサウナというものを始めたのは、ここが最初らしい。

 多くの人は、足早にその前を通り過ぎていく。

 八重洲口は、いま、再開発の計画が持ち上がっている。大丸の入っているビルも建て替えられる予定だ。
 新しいビルに、東京温泉は・・・

 東京駅のちょっと不思議な施設。新幹線に乗る前の、ちょっとした時間に探検してみるもの楽しいもの。


注意注意
  「東京クーア(東京温泉)」は、東京駅再開発工事のため2007年3月で閉鎖となりました。
 
JRの夜行バスで東京駅に到着すると、東京温泉・サウナ(男性用)、朝定食(和食:むなかた、洋食:イル・フィオレ)の割引券がもらえる。ちなみに女性は、八重洲南口から徒歩7分のところにある浦島館というところの入浴券がもらえる。
東京温泉=東京クーア・・・03-3212-2681. AM6:00〜PM11:00. 東京都千代田区丸の内1−9−1
東京駅八重洲地下名店街中央. 入泉料 AM6:00〜AM9:00 2100円 AM9:00〜PM11:00 2300円.なお、JRバスでもらえる割引券は、当日の午前6時から9時まで有効。
  

Posted by Romance Car at 01:08Comments(0)TrackBack(0)思い出の中の東京